『安かろう悪かろう』という言葉、一度は耳にした事があると思います。
文字通り『値段が安ければそれだけ質が落ちるだろう。安い物によい物はない。』といった意味。
安い包丁はすぐに切れ味が悪くなるとか、安い筆はすぐに筆先が割れてしまうとか。
様々な売り物に当てはまる言葉ですが、家具の業界でもそれは通説とも言えるし、むしろ大本命のような気もします。
正直、安いものはだいたいそれなりだと思います。
ネット上に並べられた商品は視覚情報のみが唯一の判断基準。
見せかけだけ美化された物が山のように出回っていて、その見せかけの商品を購入したお客様は、実際に届いた商品と画面上で見た商品とのギャップに驚かれる。
この業界にいると、とてもよく耳にするお話です。
勿論、中にはとてもコストパフォーマンスに優れた商品もあります。
『お値段以上、ニトリ』ではないけれど、そういった商品も確かにあると思います。
僕自身、やっぱり安いものに目が行きがちだったりしますし。
でも僕がちょっと思う『安かろう悪かろう』は、もう少し範囲を広めた意味でのそれになっていて、競合店との価格の競争にばかりに気を取られて、安さや売上ばかり追い求めると、全体的なサービスレベルが低下していってないかなって事なんです。
これは展示会などで色んな業者さんとお話したり、セミナーで他店舗の担当者の方とお話いたりする中で度々感じる事で、下記のような負のスパイラルにハマッてしまってないかなって思いました。
- 薄利多売を進めていくと、当然件数を稼がないと売上も利益が出ません。
- より多く売る為に広告を出したり、ポイントの倍率を上げたり、様々な施策を講じます。
- すると件数は増えると同時に受注対応やお客様対応が慌ただしくなります。
- 件数が増えるって事は扱う商品の量も増えるので、配送事故や初期不良等のクレームが相対的に増える傾向にあります。
- 通常の受注業務に加え、イレギュラーなクレーム対応の数が増えると、更に慌ただしくなる事にもなり、お客様一人ひとりに対するサービスレベルが落ちてきます。(確実に)
- すると、人員増加やシステムの導入等が検討されてます。
- 6の対応を講じると、追加される経費を賄う為により売上が重視されます。
- 2に戻る。
で、色々な面で削減出来る点を探しだして、ある時はメーカーや問屋さん、配送業者を買い叩いたり、無茶な依頼を掛けたりしている事があるんじゃないかって…
『企業努力でお客様に還元』
とても大切な事ですし、僕も常にこの言葉は考えています。
でもこの努力の方法が、世の中的になんかズレてきているようにも少なからず感じるんですよね。
僕の知る世界なんて、ほんっとに小さい範囲かも知れませんが…
僕は受発注業務やお客様対応からこの世界に入ったので、色々なお客様と出会ってきましたが、
最初の頃はクレーム対応が嫌で嫌でしようがありませんでした。
『うっわー、どえらいクレーム引いてしもた(;_;)』
…みたいな。
けど、いつからか考えが変わってきて、『このお客さんが次またうちで買ってくれるにはどうしたらいいかな?ファンになってもらうにはどうしたらいいかな?』って、そうゆう風に考えるようにして、行動に移してみたんです。
まさにマイナスからのスタート。
ネット販売でお客様と一番接点が強くなったり、生のご意見を伺える事ってそうそうないんですが、
クレーム対応の時が一番のような気がするんですよ。
どうしてもひとまとめに『クレーム』と言いがちだけど、ようはお客様からの『ご要望』であったり『アドバイス』であったり、『お困りごと』であったりするわけだから、頂ける言葉は一つ一つ大切にしなきゃなぁと。
なかにはボロカスに言われる事もあるし、理不尽な要望を立てられる事もありますが、それだけお客様からの素の思いが出てるとも言えます。
これは勿論その他の電話対応であったり、メール対応であったり、様々なシーンで言える事で、とっても有り難い事なんだと思います。
しっかりと耳を傾けないと。
実際、お客様からのそういったお声から、新しいサービスや商品が生まれた事もあります。
お客様に育てて頂いているっていう気持ちが少しでもあれば、一つ一つの接客応対の姿勢は自然と変わってくる。
『企業努力でお客様に還元』
『安かろう悪かろう』
価格競争が激化する小売業の中で、一体誰の為に何の為にやっているのかを改めて考えないと、間違った方向に進んでしまうように思うのでした。
近江商人の商いの心得、『三方良し』の考え方が最近とても身に沁みていて、一度しっかりと『物を売るって事』を深く考えないといけないなーと思う今日この頃。